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2009/07/02 11:23 |
パキスタン軍、地上部隊で本格攻勢へ タリバーン掃討 |
【イスラマバード=四倉幹木】パキスタン軍が、イスラム原理主義勢力タリバーンの本拠地がある北西部の部族地域に対して本格攻勢の準備を進めてい る。国際テロ組織アルカイダのメンバーも潜伏しているとされ、「テロの温床」と呼ばれる部族地域から武装組織の一掃に成功すれば対テロ戦が大きく前進する 可能性があるが、戦闘が泥沼化する危険もはらんでいる。
軍の目標は、武装勢力との衝突が続く部族地域南北ワジリスタン地区。アフガニスタンと国境を接する両地区には、ブット元首相の暗殺などパキスタンでの多くの自爆テロへの関与が指摘されている「パキスタン・タリバーン運動」(TTP)の本拠がある。
TTPは07年12月に、同国北西部の40の武装勢力がベトゥラ・メスード司令官をトップに結成した。武装構成員は4万~5万人。アフガンの旧政 権タリバーンの最高指導者オマル師に従い、アルカイダとも連携してパキスタン、アフガン両国でテロや外国軍への攻撃を繰り返してきた。
軍は約2万人の地上部隊を投入する本格攻勢の準備のため、先週から武装勢力の拠点に空爆と砲撃を加えている。
アフガンに駐留する米軍も同地区への無人機による越境攻撃を強めており、6月23日には2回のミサイル攻撃でTTPの幹部ら60人以上を殺害したとされる。これに対し、武装勢力は29日、パキスタン軍の車列を襲撃、兵士12人が死亡した。
パキスタンはこれまで、アルカイダやアフガンのタリバーンに「聖域」を与えているとの米国やアフガン政府の非難にもかかわらず、国内の反米世論や、軍事作戦による住民への被害に配慮して同地区への攻撃を控えてきた。
しかし、今年に入りTTPが北西部でイスラム法による支配を広げ、中央政府の主権を無視する姿勢をみせたことなどで風向きが変わった。TTPが首都イスラマバードの近くまで浸透し、テロによる犠牲者が増えていることも世論の変化を後押しした。
パキスタン軍は4月末以降、北西部スワート地区周辺でTTPの一部の掃討を進め、これまでに武装勢力1600人を殺害した。約250万人の国内避難民が出たが、野党も大半は軍事作戦を支持。ザルダリ政権を揺さぶっていた与野党の対立も棚上げされた格好だ。
政府側はTTPを孤立させるため、ベトゥラ司令官と同じ部族出身の地元武装勢力のザイヌディン・メスード司令官を担いで部族を反TTPでまとめようとしたが、同司令官はTTP側に暗殺された。
軍事専門家は「地元部族の大半をTTPから離反させられなければ、軍事作戦の成功はおぼつかない。ザイヌディン司令官の死は政府にとって大きな痛手だ」と話す。軍によると、南ワジリスタン地区からはすでに4万5千人の住民が他地区に避難している。
軍事作戦が失敗すればTTPなどタリバーン系武装勢力がさらに力をつけかねない。米国主導のアフガンでの対テロ戦が泥沼化するだけでなくパキスタンの「タリバーン化」が進む危険もはらむ。
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