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中東観察

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2009/07/08
11:26
米ロ核軍縮 象徴的目標では困る

 米ロ首脳が第一次戦略兵器削減条約(START1)に代わる核軍縮条約の締結で合意した。オバマ米政権が掲げる核廃絶という最終目標への象徴的な一歩として評価したいが、問題は実行力だ。

 オバマ米大統領、メドベージェフ・ロシア大統領が合意した文書は、年末に失効する第一次戦略兵器削減条約に代わる核削減条約の大枠を定めたもの で、七年間で戦略核弾頭の保有枠を千六百七十五~千五百個に、また核弾頭の運搬手段を千百~五百に抑制する内容だ。現行は核弾頭が二千二百~千七百個、運 搬手段が千六百となっているため、上限枠で比べると概(おおむ)ね三分の一の削減幅となる。

 核兵器総数の九割以上を米ロの両国で占めている現状を考えれば、今回の削減合意は核拡散防止条約(NPT)が定めた核保有国の軍縮への取り組み義務の趣旨にも沿うものといえ評価できる。

 両国は、オバマ政権が最優先課題として取り組むアフガニスタンの対テロ作戦に関連し、米軍部隊のロシア領通過容認でも合意した。また、クリントン 国務長官とラブロフ外相を長とする合同委員会を設置しエネルギー、テロ対策、薬物密輸阻止など幅広い問題で協力を図ることでも一致した。冷戦時代のように 米ロ二カ国で国際問題が解決できた時代ではなくなって久しいが、八日からはイタリア・ラクイラで主要国(G8)サミットも始まる。軍事大国として緊張緩和 への指導力を引き続き発揮してゆくことを期待したい。

 一方で懸念も多々ある。最大の懸案だった米国のミサイル防衛(MD)の東欧配備問題は進展が見られなかった。配備の前提として米側は核開発を進め るイランの脅威をあげているが、そのイランは流血事態を招いた先の大統領選挙で再選されたアハマディネジャド大統領が当選直後にモスクワを訪問、ロシアに 接近している。

 このほか、北朝鮮による核実験強行、核保有国パキスタンへのイスラム原理主義組織タリバン攻勢など、核の脅威は日増しに現実味を帯びている。冷戦時代の核抑止論は有効性を失いつつあり、新たな国際的脅威に対応する枠組みはできていない。

 米ロ間にはグルジア、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題、コソボ承認問題など火種が多い。今回の合意を着実に実行に移していくためにも、両国はこれまで以上の強い政治的意思を示さなければならない。

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