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中東観察

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2009/07/01
12:54
イラク:米軍都市部撤退 不安と期待交錯する難民の思い

 【カイロ和田浩明】駐留米軍の戦闘部隊が都市部から撤退したイラク。だが、03年3月の米軍侵攻後に国外に脱出した約200万人のイラク人の中に は、治安への懸念から帰国をためらう人も少なくない。「米軍がいなくなって大丈夫なのか」「米軍は約束通り完全に出て行くのか」。難民たちは相反する思い に揺れている。

 「新聞に顔や名前が出たら、イラクの親類に害が及ぶかもしれない」。カイロ近郊で暮らすワリドさん(80)、イナスさん(70)夫婦=いずれも仮名=はおびえた様子で話した。

 治安が極端に悪化した06年、娘と3人でバグダッドの自宅を逃れ、ワリドさんが大学を卒業したエジプトにたどり着いた。「安定するまでの数カ月」 と思っていた難民生活は3年近くに及んでいる。月200ドルの生活費を賄うにはイラクから送金される年金だけが頼りだが、滞りがちだ。

 当初、米軍を「解放者」と考えたイナスさん。だが、その後の混乱で「責任を果たしていない」と感じる。一方で、イラク政府の治安維持能力にも疑念がある。米軍の都市部撤退で「また紛争が起きるのでは」と憂慮する。

 「世界一美しい町」バグダッドに戻りたいが、治安への不安が強過ぎる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に第三国への移住も申請したが、受 け入れられていない。「私たちにできるのは、状態が良くなるよう祈るだけ」。イナスさんの顔には疲労とあきらめがにじんでいた。

 ユセフさん(45)、カリダさん(42)夫婦のエジプト生活は6年目に入った。

 避難後に始めた化学製品製造業などが軌道に乗り、金銭的な不安は少ないがユセフさんは「親類が何人も誘拐されており、帰国する気になれない」と話す。少数派のイスラム教スンニ派だけに、多数派であるシーア派主導の現政権下では「差別される」との不安もぬぐえない。

 米軍に対しては「約束通り11年末に完全撤退する保証はない」と言うユセフさん。早期撤退を求める気持ちは強いが「イラクの警察や軍も信頼できない」と心は揺れる。

 カリダさんは「もう戻れないのかもしれない、と思うこともあります」と目を伏せて話した。

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