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中東観察

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2009/07/02
11:25
パキスタン:「武装勢力は米国の手先」政府が情報戦 国民が作戦支持

パキスタン政府と北西辺境州スワート地区の武装勢力の和平協定が破棄された5月以降、戦闘はアフガニスタン国境全域に拡大している。ただこれまでの 掃討作戦と大きく異なるのは、国民の多数が政府の軍事行動を「支持」している点だ。背景には、本来は反米武装勢力に「米国の手先」とレッテルを張ること で、国民と武装勢力を離反させる政府側の情報戦術が垣間見える。【マルダンで(パキスタン北西部)栗田慎一】

 米政府が3月、最高額500万ドルの賞金をかけたパキスタンの武装勢力を束ねるベイトラ・メスード司令官。アフガンの武装勢力タリバンと連携し、国境地域で最も米国への敵対心を見せる人物だ。

 ところが今回の掃討作戦開始後、国内各地で「メスードは米国のエージェントだ」との流言が駆け巡った。さらにスワート地区の武装勢力の精神的指導者ファズルラ師らについても「米国の手先」とのうわさが広がった。

 政府軍の掃討作戦が続くスワートなどから逃れてきた人々は、一様に武装勢力に同情的だ。そうした中、避難民を自宅などに受け入れているマルダン地 区の地区評議会議員、ラシド・ハタク氏(45)は、「ファズルラ師らは武装解除せず勢力を拡大し、和平をつぶした。和平に反発する米国の手先だからだ」と 避難民や地域住民らを前に叫んだ。

 同様の発言を地域のリーダーたちが次々と行う中、政府の姿勢に多くの支持が集まっていく。ペシャワルの商店主、ファタクさん(37)は「武装勢力 がいなくなれば米国はこの地域からいなくなり、国は発展する」と言った。武装勢力が武装解除に応じず、一般市民を巻き込む自爆テロが増えるにつれ、流言は より信ぴょう性を持たれるようになった。

 「米の手先」情報について、元政府軍高官は「武装勢力と国民を切り離すのに最も効果的だ」と指摘。国民に根強い反米意識を逆手に取る政府の巧みな工作の可能性があるとみる。国民の支持を取り付けるという政府側の狙いは一定の効果を上げているといえそうだ。

 ただスワートの最大都市ミンゴラからマルダンに逃れたシャフィクさん(34)は「武装勢力の大半は空爆が始まった直後、ひげをそり、髪を短く切り逃げた。誰が武装勢力か見分けもつかず、和平に後戻りできない状況になっている」と治安のさらなる混迷を懸念した。

 ◇「弟は軍兵士に銃殺された」避難民から強い不信感

 パキスタン政府は掃討作戦で約250万人の国内避難民が政府登録したとし、国際支援を求めている。

 しかし、政府管理のキャンプで暮らす避難民はその10分の1に過ぎない。キャンプを嫌い、地域社会の中で避難生活を送っている人々の中には、「軍は市民を殺している」と証言しており、政府への不信感を隠さない人が多い。

 スワートからマルダンの友人宅に避難した男性(38)は、「弟が友人4~5人と話し合っていた時、軍兵士に銃殺された」と証言。スワート地区の ケーブル会社員(18)も「電線修理に向かう途中、軍のヘリから銃撃され同僚1人が死に、私もがけから転落して両足を骨折した」と語る。

 ボニール地区から逃れた国営電力会社に勤める40歳代の男性は、「木材を肩に担いで歩いていたら、軍のヘリからミサイルを撃たれた。数メートル先 に着弾し、砂煙が上がっている間に逃げたが、むちゃくちゃだ」と憤る。部族地域バジョール管区ダマドゥラ村から北部ラワルピンディの知人宅に逃れた男性 (45)も、「120世帯あった家が爆撃で半分に減った。武装勢力の影響がある地域が破壊されている」と語気を強めた。

 いずれも軍が「外出禁止令」を出していたさなかの出来事とみられ、「違反者」であれば市民への攻撃も正当化されている可能性が高い。戦地取材を続 ける女性ジャーナリスト、アニラ・シャヒーム記者は「避難民から聞き取った限り、少なくとも4500人の市民が5月以降に死んでいる」と言い切る。

 ◇紛争解決、交渉で歩み寄り不可欠--山根聡・大阪大准教授(南アジア地域文化)

 パキスタン・アフガニスタン国境にまたがる部族支配地域を拠点に活動する武装勢力の実態について、現地情勢に詳しい山根聡・大阪大准教授(南アジア地域文化)に聞いた。【佐藤賢二郎】

 --武装勢力の特徴は。

 武装勢力の中心である部族地域のパシュトゥン人は、イスラム法と同時に名誉、復讐(ふくしゅう)、客人歓待、ジルガ(長老会議)などを規定した独 自の慣習法を持ち、男子の武装は当然のこととされてきた。19世紀末以降3度の対英戦争に勝利し、アフガンに侵攻したソ連軍を撤退に追い込んだパシュトゥ ン人は「異教徒の支配を拒否してきた」歴史を誇りとしている。現在の武装勢力にもこの発想があるだろう。

 --対ソ戦は何をもたらしたのか。

 世界中からムスリム(イスラム教徒)戦士が集結し、そうした「よそ者」の流入が伝統的な部族社会に大きな変化をもたらした。「部族の土地を守る」戦争は、神の存在を否定する共産主義政権を打倒する「聖戦」となった。

 ソ連軍撤退後も、部族のおきてに従わず、イスラム法による体制確立を主張する新たな勢力が残った。イスラム法と慣習法の間の矛盾を指摘し、伝統的 体制を批判する勢力も現れた。94年の結成当初は「世直し自警団」的な要素の強かったタリバンが、外国人勢力の合流で政治色を帯びていった経緯もこの動き の一つと見られる。現在の武装勢力も伝統的な部族社会とは一線を画す集団に支えられていると思われる。

 --どんな組織なのか。

 「イスラム体制確立」を掲げる組織は、地元のパシュトゥン人の他、パキスタン人やアラブ、中央アジアなどから来た外国人が混在していると思われ る。そのつながりがどの程度強固なものかは不明だ。特にパシュトゥン人の中には権益が保証されれば武装勢力と決別すると宣言しているケースもあり、もろさ も併せ持っている。

 --武装勢力の掃討作戦は奏功するか。

 武力による掃討作戦は一時的安定しかもたらさないだろう。根本的解決には交渉による歩み寄りが不可欠だ。情勢に感化された新勢力が他地域で活動を 始める可能性もある。交渉可能な部族から切り崩して弱体化させ、合意点を探る方法が適当だが、将来の展開は全く予想がつかない。

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 ◆掃討作戦以降に急増したテロ攻撃◆

4月13日 ザルダリ大統領がスワート地区武装勢力との和平協定に署名、発効(14日)

  17日 東京でパキスタン支援国会合

  26日 政府軍がディール地区で掃討作戦開始

  28日 ボニール地区で掃討作戦開始

5月 3日 政府がスワート地区に夜間外出禁止令

   4日 スワート地区で掃討作戦開始

  11日 ペシャワル近郊で自爆テロ。11人死亡

  15日 部族地域・北ワジリスタン管区で自爆テロ。兵士3人が死亡

  16日 ペシャワルの市場で自爆テロ。子供2人を含む11人が死亡

  21日 ディール地区で路上の仕掛け爆弾が爆発。兵士ら4人が死亡

  27日 東部ラホールで車に乗った男が救急施設前で自爆。24人が死亡、100人以上が負傷

  31日 部族地域・南ワジリスタン管区で軍の車列が襲撃され、兵士ら3人が死亡

6月 5日 ディール地区のモスクで自爆。49人が死亡

   6日 イスラマバードの救急施設で自爆。警官2人が死亡

   9日 ペシャワルの「パール・コンチネンタル・ホテル」で自爆。18人が死亡、52人が負傷

  13日 北西辺境州デラ・イスマイルハーンの市場で自爆テロ。9人が死亡、40人以上が負傷

  26日 北部カシミールのムザファラバードで初の自爆。兵士2人が死亡

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