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中東観察

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2009/06/29
13:15
アフガン:憎悪の海の浮島--米軍基地 狙われる地元住民、隣に漂う死

 <世の中ナビ ワイド NEWS NAVIGATOR 国際>

 アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンと戦う米軍の前線基地を軍同行(エンベッド)取材で訪れた。同国南東部ホースト州のサラーノ米軍前線基地 は「ロケットシティー」の異名で呼ばれ、武装勢力のロケット弾攻撃が絶えない。基地で働くアフガン人を殺傷する非情のテロも続く。「戦場のアメリカ」の姿 を追った。【大治朋子】

 ■ロケット弾の雨

 「ドーン、ドーン」。6月4日早朝、サラーノ前線基地のテントに泊まった記者は全身に響く爆音で跳び起きた。砲撃は10回ほど続き、緊急避難を命 じるサイレンが鳴った。「防空壕(ごう)に避難するぞ」。ベニヤ板で隔てた隣で眠っていたドイツ人男性記者の呼びかけでテント前の壕に飛び込む。約10分 後、避難命令は解除された。武装勢力が基地内にロケット弾を撃ち込み、米軍が砲撃したという。

 サラーノ基地はアフガン第2の米軍前線基地で、米兵3500人を擁する。砂漠の中にあり、パキスタンと国境を接する南東部の要衝だ。戦闘激化に伴 い「武装勢力の爆弾は我々アフガン人を直撃するかもしれない」。基地で情報業務に携わる男性(25)が淡々と言った。妻と1歳半の息子がいる。最近は治安 悪化で通勤が難しくなり、基地に泊まる日々が続く。家族には「基地で働かないで」とせがまれるが、彼には「夢」がある。

 ■戦争のない国へ

 米政府は基地で一定期間以上働いたアフガン人の一部に、特別に米国移住のためのビザを交付している。男性はその対象に選ばれるのを待っているのだ。「幼いころからずっとこの国は戦場だった。戦争のない場所で家族と暮らしたい」。男性はそうつぶやいた。

 基地で働くアフガン人の大半は清掃や建設工事の手伝いをしている。大工経験のあるスピウドさん(26)によると、特別な技能のない労働者の日給は 約6ドル(約500円)。スピウドさんはその約2倍。首都カブールなど大都市では同程度の給与を得ることも可能だが、「ここなら自宅から通えるし、米軍の 食堂や病院を無料で使える」。

 だがその労働者たちも、最近の治安の悪化には懸念を強めている。同基地前では5月中旬、労働者の出勤時間帯を狙った大きな自爆テロがあり、アフガ ン人労働者7人が死亡、21人が負傷した。基地内で工事の監督を務めるモハマドさん(43)は「タリバンは我々を狙い、通勤路を調べて待ち伏せしている。 毎日道を変えなければ危ない」と話す。

 オバマ米政権は今春から2万人余のアフガン増派を順次開始。6月中旬までに、アフガン駐留米軍は約2万9000人になった。ホースト州など南東部 の治安対策強化により、戦闘が激しくなった。一方、武装勢力は警備の手薄なアフガン国軍や基地労働者らへのテロ攻撃を強めている。

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