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2009/07/13 14:37 |
【ウイグル暴動】トルコ首相「大量虐殺」発言 中国との関係強化と国内世論の板挟み バランスに苦慮 |
【カイロ=村上大介】中国新疆ウイグル自治区で起きた大規模暴動をめぐり、トルコのイスラム系与党・公正発展党(AKP)は綱渡りを強いられている。政府は経済大国化する中国との関係強化に動き出しているが、民族、宗教的なつながりのあるウイグル族への同情の世論も無視できなくなっているからだ。エルドアン首相は10日、世論に突き上げられる形で、「一言でいえば、ジェノサイド(大量虐殺)だ」と中国政府の対応を批判した。
今回の暴動では、トルコ政府は国連安全保障理事会での討議を呼び掛けたものの、中国は「内政問題」と反発。こうした状況の中、極右の野党・民族主義者行動党(MHP)や一部のメディアから、首相の「弱腰」を非難する声が上がり、イスタンブールでは10日、亡命ウイグル人にトルコ人も加わった数千人規模のデモが起きた。
トルコ企業の中国進出はめざましく、AKP出身のギュル大統領は先月、ビジネスマン約120人を引き連れ、トルコ大統領として15年ぶりに中国を公式訪問。通信や自動車部門のプロジェクトを協議し、ロイター通信によると、15億ドル相当の取引協定に調印したばかりだ。
トルコは中央アジアを起源とする民族的なつながりを背景に、1960年代から亡命ウイグル人を受け入れてきた歴史があり、現在、2~3万人の亡命ウイグル人がいるとされる。ただ、今回、国内世論をかき立てているのは、主にMHPに代表される汎トルコ主義運動と、ソ連崩壊後の中央アジアの“イスラム化”を狙ってきたトルコのイスラム勢力だと指摘されている。
両者は連携関係にはないものの、MHPは国外のトルコ系民族との民族的一体性を訴える。イスラム勢力の方は、90年代以降、中央アジアで活発な活動を続けてきた、ある裕福な教団(指導者は現在、米国に在住)が無視できない存在だ。
エルドアン首相は、政党として競合関係にあるMHPの“得点”を封じ込めつつ、自らの支持母体である宗教勢力に配慮を示したのが今回の発言の背景だが、AKPのもう一つの支持基盤である中小企業経営者たちの利益を損なうこともできず、そのかじ取りは難しい。
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