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2009/07/23 15:45 |
テロとの戦いと米国:第3部 アフガン非対称戦/1(その1) 民心つかむ情報戦 |
◇タリバンが「夜の手紙」/「証拠写真」で反論
「この戦争は、戦闘だけでは勝てない。住民の信頼が必要だ」。アフガニスタン南東部パクティカ州。先月初め、州都シャランにある米陸軍前線基地近くの地区センターで開かれた会議で、アフガン国軍のマルク大将が、同基地のベーカー中佐らに訴えた。
マルク大将はモスクワで学び、旧ソ連のアフガン侵攻(79~89年)では、アフガン反政府ゲリラと戦った。大規模な旧ソ連軍が敗れたのは、「住民の心をつかむ心理戦に負けたからだ」と振り返る。
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同州はアフガンでも最貧困地域の一つとされる。識字率は0・5%。ラジオのある家も少ない。だが武装勢力タリバンなどはこうした環境を生かし、独自の情報戦略を展開する。その一つが深夜、モスク(イスラム礼拝所)などに張り出す「ナイト・レター(夜の手紙)」だ。
今春、州内で見つかった「夜の手紙」は18ページにのぼる長文だった。「イスラム教徒は兄弟だ」「米軍は民家や結婚式を空爆している」「アフガン 政府は腐敗している」。反米・反政府感情をあおる言葉が続き、地元の宗教指導者に、住民に読み上げるよう指示。無視すれば「殺す」と脅す。
手紙に共感して10ドル程度の報酬と引き換えに、爆弾を埋める手伝いをする住民もいる。米軍は「10ドルタリバン」と呼ぶが、攻撃の対象にはして いないという。地元のパシュトゥン民族はワリという特有の規律を持ち、報復の規定もある。「彼らを殺せば別の敵を作り、住民を敵に回すことになる」(米 軍)からだ。
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シャラン前線基地の作戦司令室。ハイテク装備が並び、大画面には無人偵察機の映し出す映像がライブで流れる。その脇の一室で、広報のダグラス2等 軍曹らがチラシを作る。軍備や兵力では歴然とした差のある非対称の戦争。だが、ハイテク部隊の米国は古典的ゲリラ戦術をも駆使しなければ勝てない。
「米軍が罪のない男性を殺した」。今年4月、州内に張り出されたそんな手紙に、米軍は「証拠写真」入りのチラシで反論した。男はタリバンの爆弾製 造担当者で、兵器の押収写真を添えたという。ダグラス2等軍曹は、「地道に事実を伝えれば、住民の信頼につながるはずだ」と強調する。最近米軍は、武装勢 力を殺害すると銃を持った遺体などを撮影。アフガン国軍優勢の「証拠」として公表している。「武装勢力の情報戦に、我々は追い付きつつある」。ウルフ特務 曹長が力を込めた。【シャラン前線基地で大治朋子】
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圧倒的な戦力の米軍を、ゲリラ戦で振り回す武装勢力。泥沼化する非対称の戦争の現場を伝える。=つづく
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