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中東観察

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2009/07/27
04:41
テロとの戦いと米国:第3部 アフガン非対称戦/4 「情報戦略」DJ人気に

基地の一角にある窓のない部屋。ここからアフガニスタン人のマシュクールさん(26)とノラニーさん(21)は、遠く離れた市民との「声」のキャッチボールを続けている。

 アフガン政府と米軍は今年初め、南東部パクティカ州のシャラン前線基地にラジオ局を開設した。アフガンでは、ラジオを情報源とする人は6割にのぼる。現地語で1日2回の生放送や視聴者が自作の詩を披露し合う番組が話題を集め、2人は今では地元で人気のカリスマDJだ。「当初は一本もなかった電話が、今は毎日50本ぐらいかかるんだ」。マシュクールさんは、ちょっぴり自慢げに話した。

    ◇

 米陸軍は朝鮮戦争での対ゲリラ戦で、当時のマッカーサー司令官がソウル米大使館にラジオ局を開設。初めて本格的な情報戦略を展開したとされる。1955年、マニュアル「戦争心理作戦」を作成。敵の戦意を奪い、市民の支持を集めるラジオ番組の活用を提唱。ベトナム戦争では当時の南ベトナムに7局を開設したという。

 アフガンでも米軍は、「ラジオは我々の主戦場の一つ」(アフガン東部サラーノ前線基地・グレゴリー少佐)と位置づける。戦闘があると、数時間後にはラジオを通じて詳細を伝える。「敵は我々が故意に多数の民間人を殺したといううその情報を流すので、先に情報を提供する必要がある」(同)という。

 一方、武装勢力タリバンは96年の政権樹立を機に、ラジオ局「イスラム法の声」を開設。01年のアフガン戦争開戦で活動を中止したが、07年ごろから一部放送を再開した。最近は民間ラジオ局にもメッセージを流すよう働きかけ、米軍攻撃による民間人被害を強調。米軍と激しい批判合戦を繰り広げている。

    ◇

 「女性が電話をかけてくれるんです」。ノラニーさんがつぶやく。保守的なパクティカ州では、ラジオ局に女性が電話をかけることは「家族の恥だ、と親に殺されかねない」(マシュクールさん)。だが最近、女性問題を話し合う番組を始めたところ、若い女性が親に隠れて電話をかけてくるようになった。涙ながらに「学校に行きたい」と訴える声もある。戦争の道具として始まったラジオ放送。だがノラニーさんは、「人々の声を集めて変化につなげたい」と笑顔を浮かべた。【シャラン前線基地で大治朋子】=つづく

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