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中東観察

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2009/07/09
12:40
アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)とは

国際治安支援部隊(こくさいちあんしえんぶたい : International Security Assistance Force)は、国際平和活動のひとつ。アフガニスタンの治安維持を通じアフガニスタン政府を支援する目的で、2001年12月5日ボン合意[1]に基づく2001年12月20日国連安保理決議1386号[2]により設立された。当初は有志国の集まりからなる多国籍軍により構成されていたが、現在は北大西洋条約機構(NATO)が統括する。略称はISAF(アイザフ)。

ISAFの作戦本部はアフガニスタンカブールにあり、司令本部はオランダのNATOブロンソン連合統合軍司令部に置かれる。いずれも、欧州連合軍最高司令官(Supreme Allied Commander Europe: SACEUR)の指揮下にある。
 

設立根拠 

国際治安支援部隊(ISAF)は、NATOによる活動を国連が承認したもの。設立は、2001年12月20日安保理決議1386号により、国連憲章第7章の発動の下で行われる軍事的強制措置[3]、すなわち集団安全保障の実行措置として、憲章第43条の規定に基づいている。軍事的強制措置は、「安全保障理事会と加盟国の間の特別協定に従って提供される兵力・援助・便益」によって行われる。ISAFはこの措置に従い、2001年12月31日にアフガン暫定政府と軍事技術協定(Military Technical Agreement)[4]を結んでおり、この協定はアフガン正統政府の発足後、2003年12月9日に再び調印されている。ただし、この協定はISAFとホスト国の間で交わされたものであり、国連とISAFの間で交わされたものではない。憲章第43条の規定は部分的にのみ履行されており、安保理・加盟国間の協定は成立していない。

2007年9月19日の安保理決議1776号[5]及び延長前の1707号(2006年9月12日採択)[6] において、ISAF司令部に対し、「事務総長を通し安全保障理事会に対しその活動委任内容の履行状況について四半期ごとあるいは定期的な報告を行うことを要請する」という主旨の決定事項が決議本文に記載されているものの、国連憲章第1章に基づく平和維持軍ではない。ISAFは、湾岸戦争における安保理決議678(武力行使容認決議)と同様、国連憲章第7章に基づき「国連安保理に派遣を承認された有志国連合軍」(いわゆる「多国籍軍」)である。[7]

根拠文書 

ISAFの設立を承認した安保理決議1386は、ボン合意の付帯文書I、「ANNEX I: INTERNATIONAL SECURITY FORCE」)[8]の規定に基づきその履行措置として採択された。付帯文書Iの当該箇所の要旨(仮訳)は次のとおり(太字部分が、当初想定されていた任務内容である)。

  1. この会議の参加者一同は、アフガニスタンにおける治安と秩序の維持はあくまでアフガン国民自身の責務であることを認める。このため、会議の参加者 一同は、国連要員、国際機関及びNGO要員が安全な環境の中で活動できるようにするため、許容される限りの手段と影響力を行使して治安の維持に務めること をここに約する。
  2. 上記目的を念頭に、この会議の参加者一同は国際社会に対し、保安部門及び国軍の創設についてアフガンの新政府当局を支援することをここに要請する。
  3. アフガン独自の保安部門及び国軍の確立には相当な時間がかかることを想定し、この会議の参加者一同は国連の安全保障理事会に対し、国連授権のある部隊の早期派遣を求める。この部隊は、カブールならびにその周辺地域における治安維持支援の任に当たるものとする。同部隊は、適当であると判断される場合は、必要に応じて、他の都市部及び地域へと展開することが可能であるとする。
  4. この会議の参加者一同は、国連授権の部隊が展開されるカブールその他都市部およびその他地域から、各々の軍隊を撤退されることを約する。またこの部隊は、アフガニスタンの国内インフラの復興を支援する能力を有するものであることが望まれる。

任務 

国際治安支援部隊(ISAF)は、アフガニスタン政府、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)、国際機関(IGO)および非政府組織(NGO)と連絡及び協力することにより各機関と連携してその任務を果たす。[9]ISAF の任務は、「アフガニスタン当局者及び、特に人道・復興分野に従事する国連要員その他国際文民要員等が安全な環境で活動できるよう、アフガニスタン国内の 治安維持について同国政府を支援すること」である。具体的には、パトロール等の治安維持活動や、国軍・警察等の治安部隊の訓練、民軍協力(CIMIC: Civil-Military Cooperation)プロジェクトの調整、アフガニスタン政府の治安分野改革DIAG、麻薬対策等)の支援などを実施することである。

設立当初、ISAFはMTA(Military Technical Agreement: 軍事技術協定)に基づきアフガニスタンのカブール及び近郊のバグラム空軍基地を含むAOR(Area of Responsibility: 活動範囲)の治安維持を支援することを目的として、各国軍から構成される多国籍軍が半年の活動期間を与えられていた。しかし後続の決議、アフガニスタン政府の要請、そしてNATOによる政治決定を受けて、ISAFの活動範囲は徐々に拡大されていった。

任務の変遷 

  • 2001年12月20日安保理決議1386により6ヶ月の期間で任務を与えられる。
  • 2002年5月23日、安保理決議1413により期間が半年延長される。[10]
  • 2003年8月11日国連およびアフガニスタン政府の要請により、この日を以って指揮権が ドイツ オランダ連合軍からNATOへと移行する。
  • 2003年10月13日、安保理決議1510号により活動範囲をカブール周辺からアフガニスタン全土に拡大することが承認される。[11]
  • 2003年12月、北部へ展開を開始する(ステージ1)。
  • 2004年6月24日 トルコでのNATO首脳会議でカブール周辺以外の地域への任務拡大が決定される。[12]
  • 2005年5月、西部への展開を開始する(ステージ2)。
  • 2006年7月、南部の治安維持部隊の指揮権をOEFより継承。南部展開を開始する(ステージ3)。
  • 2006年10月、東部の治安維持部隊の指揮権をOEFより継承。東部へ展開を開始する(ステージ4)。

任期 

これまで、ISAFの任務は数度に渡って延長されており、最新の安保理決議1833号(2008年9月22日採択)により、現在の任務は2008年10月13日から2009年10月13日までの1年間となっている [13]

活動内容 

国際治安支援部隊の活動は6つの柱から構成されている。[14]

  1. アフガン国家治安部門(ANSF)[15]と連携した治安維持支援
  2. ANSFおよびアフガン国家警察(ANP)[16]の開発及び育成の支援
  3. 復興ニーズの調査支援
  4. 非合法武装集団の解体(DIAG)[17]支援
  5. 麻薬対策支援
  6. 人道支援サポート

特権免除 

ISAFの要員、支援要員、及び関連する連絡要員は全て、アフガニスタン暫定政府と結ばれる軍事技術協定(MTA)に基づき以下の特権免除を付与される。[18]

  1. 1946年2月13日の 国際連合の特権及び免除に関する条約[1]に於ける国際連合のための任務を行なう専門家に関する条項の変更すべきところを変更した(mutatis mutandis)規定の適用。
  2. 個人逮捕及び拘束の免除。誤って逮捕若しくは拘束された場合、すみやかにISAF当局に引き渡されなければらない。
  3. アフガニスタン領内に於ける各部隊提供国要員によるあらゆる刑事犯罪もしくは軍規違反行為に関する当該要員所属国の専属管轄権の行使。この際、アフガニスタン暫定政府はこれら管轄権の行使に辺り部隊提供国を支援しなければならない。
  4. 部隊提供国の承諾なき、あらゆる国際法廷、機構若しくは国家に対する引渡し若しくは身柄の拘束の免除。

組織構成 

国際治安支援部隊(ISAF)は陸・空の2つの側面から活動を展開する。それぞれが本部や方面軍を持ち、その作戦運用面での全てを統括するのがカブールの司令部で、カブールの司令部はNATO欧州連合軍最高司令部(SHAPE: Supreme Headquarters Allied Powers Europe)にその司令部を置く連合統合軍司令部(ACO:Allied Command Operations)の指令を受ける。ISAFの場合は、オランダのブロンソン連合統合軍司令部(JFBCS: Allied Joint Force Command Brunssum)がその指揮を執る。

ISAFの組織構成は次のとおり。

  1. 欧州連合軍最高司令部(SHAPE)
  2. ブロンソン連合統合軍司令部(JFBCS)
  3. カブール司令部(HQ ISAF)
  • 航空任務部隊(ATF:Air Task Force)
  • 方面軍(RC:Regional Comand)
  • 前進兵站基地(FSB:Forward Support Base)
  • 地方復興支援チーム(PRT:Provincial Reconstruction Team)

指揮系統 

当初は、指揮国が半年交代であり、イギリストルコドイツの順に指揮を取った。しかし、指揮国の負担が大きかったため、2003年8月9日より、NATOが指揮を取ることとなった。[19]これは、NATOとしての初の北米・欧州以外への域外派遣となる。

参加国 

2008年10月現在、国際治安支援部隊(ISAF)には欧州連合(EU)を中心に、計41カ国から50,700名が参加している。[20]2002年1月10日以降、ISAF参加国は相互にMOU(共同覚書)を締結することにより、ISAFへの参加を公式なものとしている。[21]ISAFの参加国構成は次のとおり。

NATO加盟国 

2008年10月現在、ISAFにはNATO加盟国から以下の25カ国が参加している。増減数は2007年10月から比較したもの。
No. 国名 戦力 増減
1. ベルギー 420 30
2. ブルガリア ブルガリア 460 70
3. カナダ 2,500 (579)
4. チェコ チェコ 415 84
5. デンマークの旗 デンマーク 750 234
6. エストニアの旗 エストニア 120 (8)
7. ドイツ 3,310 402
8. ギリシャ 130 (13)
9. ハンガリー 240 (74)
10. アイスランド 8 8
11. イタリア 2,350 (223)
12. ラトビア 70 (14)
13. リトアニア 200 2
No. 国名 戦力 増減
14. ルクセンブルク 9 0
15. オランダ 1,770 429
16. ノルウェー 455 14
17. ポーランド ポーランド 1,130 187
18. ポルトガル 70 (112)
19. ルーマニアの旗 ルーマニア 725 181
20. スロバキアの旗 スロバキア 70 (2)
21. スロベニア スロベニア 70 5
22. スペイン 780 75
23. トルコ 800 (415)
24. イギリス 8,330 1,652
25. アメリカ合衆国 20,600 5,446

非NATO加盟国(EAPC) 

現在、ISAFには非NATO加盟国でEAPC加盟国から以下の10カ国が参加している。
No. 国名 戦力 増減
1. アルバニア 140 (2)
2. オーストリア 1 (1)
3. アゼルバイジャン 45 23
4. クロアチア 280 167
5. フィンランド フィンランド 80 (21)
6. マケドニア 135 2
No. 国名 戦力 増減
7. アイルランド 7 2
8. スウェーデン 280 (76)
9. スイス 0 撤退
10. グルジアの旗 グルジア 1 1
11. ウクライナ 3 新規

非NATO加盟国(非EAPC) 

現在、ISAFには非NATO加盟国で非EAPC加盟国から以下の6カ国が参加している。
No. 国名 戦力 増減
1. フランス[22] 2,730 1752
2. オーストラリア 1,080 197
3. ニュージーランド 155 3
4. ヨルダン 0 (90)
5. シンガポール国旗 シンガポール 0 新規
6. UAE 0 新規

 

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