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2009/07/16 11:16 |
アフガンに初の国立公園、至宝の湖沼群に託す夢 |
戦火の続くアフガニスタンの山奥に、まるで別世界のような美しい湖沼群がある。この景勝地がこの国で最初の国立公園 に指定され、先月現地で開園式が開かれた。観光客の誘致など、この国にはまだ無縁の高望みのように見える。しかし、これを平和回復と復興の第一歩にしたい という人々の願いは切実だ。
「世界で一番きれいな湖がこの先にある」。そう耳にしたのは、タリバン政権が崩壊した翌年の春にアフガン中央部のバーミヤンを訪れたときだった。バンデアミールという名前だという。車で2、3時間の距離だが、道路にはまだ雪が残り、地雷の危険もあると聞いて結局、行くのをあきらめた。
バーミヤンの 町から西へ約80キロのバンデアミールは大小5つの湖から成る。湧(わ)き水の中に含まれる石灰が長年の間に堆積(たいせき)して天然の堰(せき)とな り、湖が生まれた。周囲の切り立った断崖(だんがい)と荒涼とした大地、湖の澄み切った深い青。その鮮烈な対照は「アフガンの至宝」といわれる。
独特の深い青は、水中に多く含まれるミネラル分のためだという。1日の間でも光の差し方によって色調が変化する。その青の見事さは古来、この地域の特産だった貴石ラピスラズリにも例えられる。標高2900メートル、ヒンドゥークシ山脈の山々に抱かれた高原の別世界である。
先月中旬に現地であった国立公園誕生を祝う式典にはハリリ副大統領やアイケンベリー米大使など数百人が参列した。同大使は「この美しい景観は将来への希望 を示している」とあいさつし、アフガン政府代表も「やがて世界中から人々が必ずやって来る」と観光再生への夢を語った。
バンデアミールのあるバーミヤン州はアフガンで特異な位置を占める。住民の多くが日本人に顔立ちのよく似た少数民族のハザラ人であることだ。この国の多数派はスンニ派だが、ハザラ人の大多数はシーア派であり、それはバンデアミールという名前にも投影している。
ダリ語で「王の堰」という意味だが、王というのはシーア派の初代イマーム、アリーを指す。「アリーが霊力を使って湖をつくり、畏怖(いふ)した暴君をイスラム教に帰依させた」。「洪水に苦しむ住民の訴えを聞き、アリーが霊力で堰をつくった」。アリーへの畏(い)敬(けい)の念を刻むさまざまな言い伝えが残っている。
シーア派のハザラ人が住むというバーミヤン州の特質は「アフガン一」といわれる治安の良さに直結している。スンニ派主体のタリバン政権下でハザラ人は徹底的に弾圧された。このため住民の反タリバン感情は強く、攻勢を強めるタリバンもこの地域には浸透できていない。
1970年代末に内戦が始まるまでバーミヤンには国内外から多くの観光客が訪れた。カブールの古本屋で買った77年出版の政府観光局の旅行案内書による と、バンデアミールには数軒のホテルとキャンプ場もあったようだ。1日に何台ものバスがここに観光客を運んできたともいう。
観光再生の取 り組みは少しずつ具体化しているようだ。カブールからバーミヤンまで今は8、9時間かかるが、道路の改修・拡幅工事が進んでいる。共同通信の現地通信員を していた写真家の安井浩美さんがバーミヤンの町にホテルを開いたことも最近の現地発の記事で知った。タリバンが破壊した大仏跡のある断崖(だんがい)を望 む眺望絶佳の場所にあり、日本食も出すという高級ホテルだ。
しかし、戦火の続くこの国にどれだけ観光客が来るのか。思いだすのは20年ほ ど前に取材で訪れたアンコールワットだ。カンボジアが世界に誇るこの大遺跡も内戦のため人影はほとんどなかった。それが今や世界中から年に100万人以上 が押し寄せる観光の大黒柱だ。平和が戻れば必ず人は来る。バンデアミールがアンコールワットのようになる日は果たして訪れるだろうか。
(在バンコク・ジャーナリスト 鈴木真)
・・ 行ってみたいもんだ。
後で画像を探してみます。
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