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2009/07/03 12:07 |
米軍都市部撤退 イラクの治安なお不安 |
イラクに駐留する米軍が都市部から撤退した。市民には「占領」からの解放を喜ぶ声がある一方、直前には連続テロも起きた。イラク治安部隊の能力向上を急ぐとともに、国内の和解も進めたい。
米軍戦闘部隊の都市部からの撤退は昨年十一月、イラクと米国が結んだ地位協定に基づく措置。さらに今年二月、オバマ米大統領が駐留米軍のうち戦闘 部隊約十万人を来年八月末までに撤退、残りはイラク治安部隊の教育と米国による復興支援の護衛、そして二〇一一年末までに完全撤退-を発表した。一カ月の 死者が三千人を超えた〇六年夏に比べ、治安の格段の改善が進んでいると判断したからだ。
ところが撤退の迫った特に六月以降、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織などによるテロ活動が活発化し、首都バグダッド近郊のイスラム教シーア派 地区で七十八人が死亡するテロが起きた。クルド人とアラブ人が帰属を争う大産油地のキルクークでは、二件のテロで計百人が死亡している。
タラバニ大統領は「治安権限を引き継ぐわれわれの決意を揺るがすことはできない」と、テロを激しく非難するが、米軍撤退による国民の不安は高まるばかりだ。
アルカイダの活動が活発な北部モスルについては米軍は、残留を要望したが、イラク政府側は「予定通りの撤退」を貫いた。しかし国民がなお危険にさらされている現状では、郊外に再配置した米軍がテロなど緊急事態に対し速やかに対応できる態勢になっていることが不可欠だ。
イラクの治安部隊だけでは不安な材料としては、旧フセイン政権時代の強力な治安部隊を指揮していたスンニ派元幹部が、シーア派からの報復を恐れ、国外に脱出したままとの指摘がある。マリキ首相としては、こうした幹部を呼び戻したい意向だが、シーア派勢力が反対している。
両派が容易に和解できない歴史的背景は分かるが、その困難を越えなくてはイラクの真の再建はできない。さらに北部地域の住民イラク・クルド人との協調も必要だ。それらがそろってこそ未来のイラク像が描ける。そのためにはアラブ諸国を含めた国際的協調が強い支えとなる。
イラク開戦から六年が過ぎ、シーア派主導政権も定着しつつある。宗派、民族対立を克服し、一丸となって国民が平和で、安全な生活が送れる新生イラクの再建は国際的な願いでもある。
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