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中東観察

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2009/07/28
11:39
テロとの戦いと米国:第3部 アフガン非対称戦/5止 課題残す、女性の「解放」

「我々のアフガニスタンにおける勝利で、女性はもはや自宅に閉じ込められることはなくなった」。01年11月、当時のローラ・ブッシュ米大統領夫人 はラジオ演説で高らかに宣言した。同年10月のアフガン戦争でタリバン政権が崩壊し、抑圧されてきた女性が「解放」されたという意味だ。

 確かに女性の権利は一部で向上した。04年制定のアフガン憲法は下院で25%、上院で17%の女性議席を保障する。だが一部の女性の権利擁護団体は「女性の問題が対テロ戦争の正当化に使われてはならない」と警戒する。

    ◇

 パキスタンとの国境沿いにあるアフガン南東部パクティカ州のワザクワ米前線基地。この近くに07年秋、米国の非営利団体、国際医療団(IMC)と アフガン政府が女性専用の医療施設を開設した。米軍も週3回、女性の衛生兵を派遣している。地方には保守的なイスラム教徒が多く、女性は男性医師の診察を 受けられないからだ。

 「妻を連れてくる夫が増えている。最近では1週間に10~20人の女性がここで出産している」。パキスタン人の産婦人科女医、マシバヒア・エンワ さん(40)が笑顔を浮かべた。地元の慣習を重んじ、「知事代理を通じて部族の長老らに病院の利用を呼びかけたのが功を奏した」という。

 国連によると、アフガンの出産率は1人当たり6・6人でアジアで最も高い。だが病院での出産は1割以下で、30分に1人の割合で妊婦が死亡してい る。特に人口の8割以上が居住する地方では、環境が不衛生で栄養状態も悪い。体が未成熟な15歳前後で結婚・出産を強いられるため、その死亡率は都市部の 10倍以上だという。

 地方では、夫による暴力も日常的だ。エンワさんは「女性の体には無数のあざや、やけどの跡がある」と怒る。

    ◇

 米陸軍は06年作成の対ゲリラ戦マニュアルで、地域の情勢に詳しい女性の存在に注目。米兵に、女性から協力を得るよう促した。だが現場の兵士は 「むやみに女性に接近すれば住民は反発し、さらに保守化する」と懸念する。サンディエゴ州立大のアフマドゴシュ教授は「アフガンの背骨は都市部のエリート ではなく、保守的な地方の部族だ。国際社会が真の変化を促せるかどうかは、いかに部族のリーダーと対話を持てるかにかかっている」と指摘している。【パク ティカ州ワザクワで大治朋子】=おわり

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2009/07/28
11:31
アフガン政府、タリバンと停戦合意

2009.7.27 18:09

 アフガニスタン政府が25日に、同国北西部バドギス州でイスラム原理主義勢力タリバンと停戦合意していたことが明らかになった。ロイター通信が27日、大統領スポークスマンの話として伝えた。

 治安悪化が深刻化する中、アフガン政府がタリバンと停戦合意を結ぶのは初めて。来月20日のアフガン大統領選をにらんだ治安安定化のための動きとみられる。(ニューデリー 田北真樹子)

2009/07/27
04:47
副大統領候補の車列襲撃 アフガンでタリバン

アフガニスタン北部クンドゥズ州で26日、ファヒーム元国防相の車列が、武装集団に襲撃された。ファヒーム氏は来月の大統領選に出馬しているカルザイ大統領が第1副大統領候補に指名している。カルザイ氏の選挙事務所によると、ファヒーム氏は無事だったが、同行カメラマンが負傷した。

 選挙運動の妨害を宣言している反政府武装勢力タリバンが犯行を認め、「ファヒーム氏の警護要員を少なくとも5人殺害した」と主張した。選挙事務所によると、ファヒーム氏は選挙運動中で、銃やロケット砲で攻撃されたという。

 同国ではこれまでにも、選挙管理委員会職員やカルザイ氏の有力対立候補の選挙事務所関係者が銃撃され死亡している。こうした銃撃がタリバンの犯行かどうかは不明。(共同)

2009/07/27
04:41
テロとの戦いと米国:第3部 アフガン非対称戦/4 「情報戦略」DJ人気に

基地の一角にある窓のない部屋。ここからアフガニスタン人のマシュクールさん(26)とノラニーさん(21)は、遠く離れた市民との「声」のキャッチボールを続けている。

 アフガン政府と米軍は今年初め、南東部パクティカ州のシャラン前線基地にラジオ局を開設した。アフガンでは、ラジオを情報源とする人は6割にのぼる。現地語で1日2回の生放送や視聴者が自作の詩を披露し合う番組が話題を集め、2人は今では地元で人気のカリスマDJだ。「当初は一本もなかった電話が、今は毎日50本ぐらいかかるんだ」。マシュクールさんは、ちょっぴり自慢げに話した。

    ◇

 米陸軍は朝鮮戦争での対ゲリラ戦で、当時のマッカーサー司令官がソウル米大使館にラジオ局を開設。初めて本格的な情報戦略を展開したとされる。1955年、マニュアル「戦争心理作戦」を作成。敵の戦意を奪い、市民の支持を集めるラジオ番組の活用を提唱。ベトナム戦争では当時の南ベトナムに7局を開設したという。

 アフガンでも米軍は、「ラジオは我々の主戦場の一つ」(アフガン東部サラーノ前線基地・グレゴリー少佐)と位置づける。戦闘があると、数時間後にはラジオを通じて詳細を伝える。「敵は我々が故意に多数の民間人を殺したといううその情報を流すので、先に情報を提供する必要がある」(同)という。

 一方、武装勢力タリバンは96年の政権樹立を機に、ラジオ局「イスラム法の声」を開設。01年のアフガン戦争開戦で活動を中止したが、07年ごろから一部放送を再開した。最近は民間ラジオ局にもメッセージを流すよう働きかけ、米軍攻撃による民間人被害を強調。米軍と激しい批判合戦を繰り広げている。

    ◇

 「女性が電話をかけてくれるんです」。ノラニーさんがつぶやく。保守的なパクティカ州では、ラジオ局に女性が電話をかけることは「家族の恥だ、と親に殺されかねない」(マシュクールさん)。だが最近、女性問題を話し合う番組を始めたところ、若い女性が親に隠れて電話をかけてくるようになった。涙ながらに「学校に行きたい」と訴える声もある。戦争の道具として始まったラジオ放送。だがノラニーさんは、「人々の声を集めて変化につなげたい」と笑顔を浮かべた。【シャラン前線基地で大治朋子】=つづく

2009/07/25
11:12
テロとの戦いと米国:第3部 アフガン非対称戦/3 子供の未来阻む汚職

 6月の青空が広がるアフガニスタン南東部パクティカ州。南部のワザクワ米軍前線基地から、小隊長のスコット中尉(24)が近くの学校に向かった。子供たちに学用品を配るという。ところが約30人の教師らが、ぞろぞろと学校から出て来る。

 「給料を払わないから、抗議に行く」。教師の一人が不満げに言った。月給は本来、4200アフガニー(約8300円)だが、地元の教育省幹部は 「アフガン通貨もパキスタン通貨も村の市場では同じ価値」と主張。4000パキスタン・ルピー(約4600円)しか支払わず、教師が抗議すると今年3月、 支払いを停止したという。シャーハン校長(25)は「役人は為替の差額を盗んでいるんだ」と怒りをぶちまけた。

    ◇

 アフガン政府の汚職体質は、来月の大統領選でも大きな論点だ。米国国際開発庁によると、米国が02年からこれまでにアフガンに送った80億ドル (7500億円)のうち、適正に処理されたのはわずか1割。大半は使途不明になっているという。米軍はゲリラ戦対策として武装勢力タリバンを孤立させ、 「市民に信頼される政府」を目指す。だがアジア財団の08年調査によると、市民の3人に1人はアフガンの未来に悲観的で、半数は治安、2割は汚職体質を理 由にあげている。

    ◇

 「お金を見せてほしい」。スコット中尉が地区センターで金庫を確認すると、すべてパキスタン通貨だった。「政府はアフガン通貨で支給しているのだ から、そのまま払えばいいでしょう」。中尉の言葉に、ガウハル知事代理(40)も教育省幹部も「ずっとパキスタン通貨で払ってきた」と繰り返すばかりで要 領を得ない。校長の希望で中尉らが立ち会い、今後はアフガン通貨を使うと約束することで「決着」した。

 近くの市場に行くと、学校に行けない子供たちが集まっていた。サイード君(13)は「学校はしょっちゅう休みになる。去年は目の前で校舎が爆破さ れたよ」と言う。タリバンは普通教育を否定。学校周辺に爆弾を仕掛け、マドラサ(イスラム神学校)に通学するよう脅している。教師のジャバルヘルさん (22)は、「我々も命がけだが、教育は国の未来を支える大切な仕事だから」と、自分に言い聞かせるように話した。【ワザクワ前線基地で大治朋子】=つづ く