2024/11/27 12:54 |
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2009/07/03 12:08 |
イラン大統領選:現職再選、混乱 松永泰行・東京外語大准教授/孫崎享・元イラン大使 |
大統領選の開票結果を巡り、イスラム革命(79年)以来の大混乱に陥ったイラン。「再選」を決めた保守強硬派アフマディネジャド大統領と、改革派 ムサビ元首相の対立に端を発した混乱は、革命から30年を経た支配体制のほころびを浮き彫りにした。聖職者中心のイスラム体制の将来や、イランとの対話を 模索するオバマ米政権との関係などについて、松永泰行・東京外国語大学大学院准教授と孫崎享・元イラン大使に話を聞いた。
◆改革派には組織も戦略もなかった。リーダーを育てる必要がある
◇将来、内部から変革も--松永泰行・東京外語大准教授
今回の選挙に不正はあったかもしれないが、結果を覆す規模だったとは思わない。
アフマディネジャド大統領の再選は短期的には、イラン革命体制の護持を命題とする最高指導者ハメネイ師の勝利と言える。米国流の経済、文化、民主主義の流入を警戒するハメネイ師にとって、この大統領は使い勝手がいい。
だが、中期的には、革命第2世代と言われる、大統領を含む革命防衛隊出身者ら非聖職者エリートの勝利につながる可能性が高い。大統領はタブーを破 り、ムサビ元首相やラフサンジャニ元大統領ら革命の功労者(第1世代)を「腐敗した特権階級」と批判し当選した。メディア、大学、土建、エネルギー、貿 易、政治などの分野でも、革命防衛隊出身者の台頭は目覚ましい。
イスラム法学者としての権威が弱いハメネイ師は、自身の基盤強化のために革命防衛隊出身者らを育て上げた。ハメネイ師が弱体化すれば、聖職者に依存する現体制を第2世代が内側から破壊することもありえる。
さらに5~10年後には、「緑の波」運動(ムサビ氏支持の抗議)に加わった人々が勝利するかもしれない。信仰の自由、人権、男女平等、政教分離などを求める中産階級や富裕層だ。今すぐには無理だが、第2世代によって体制が崩されることが前提だ。
学生中心の99年の抗議運動は広がらず、抑圧された。今回は選挙を機に多数の一般市民が参加したが、改革派には組織も戦略も無かった。改革派はこ れから大衆政党として組織化し、“地区支部”のリーダーを育てる必要がある。79年の革命や1905年の立憲革命がそうであったように、元々イランには政 府に物申す伝統がある。【聞き手・花岡洋二】
◆西側との緊張関係を続けたいのが本音。オバマ流シナリオ崩れる
◇対米関係改善、困難に--孫崎享元イラン大使
アフマディネジャド大統領の「再選」で米イラン関係の改善は難しくなった。オバマ米大統領は選挙後の混乱について当初静観していたが、国内保守派 から「弱腰」との批判も受け、イランへの非難を強めざるを得なくなった。イラクとアフガニスタンの安定化に必要なイランとの対話は極めて困難になった。
イスラム世界との和解を掲げるオバマ氏は6月のカイロ演説で、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を訴えた。だが、イスラエルは共存の条件で ある占領地への入植活動凍結を拒否。アフマディネジャド氏の再選でイランとの対話も遠のいた。和解へのシナリオは2度にわたり崩れたと言える。
イラン核問題の進展も見通しは暗い。核開発の理由には(1)エネルギー需要(2)「一流国家」への仲間入り(3)核兵器の保有--などが考えられ るが、はっきりしない。一方、米国は西側諸国にイラン石油開発への投資すら認めず、原子力開発の許容範囲も明確にしていない。イランが経済発展で軍事力を 強めるとの疑念から、中東唯一の核保有国とされる同盟国イスラエルの優位性を維持するためだ。
イランは欧米が「宗教支配体制を崩そうとしている」と考え、国民の離反を最も恐れている。国民をつなぎ留めるためにも西側との緊張関係を続けたい のが本音で、反撃の口実をつくるために西側から攻撃されても構わないとすら考えている。改革派ハタミ政権時代、米との対話を模索し、期待が裏切られたとい う不信感がある。
国際社会は今後、「国連安保理5常任理事国+独」などさまざまな枠組みで対イラン交渉に臨み、当面は制裁強化に傾くだろう。だが、イラン側から対話に傾く可能性は小さい。【聞き手・鵜塚健】
2009/07/03 12:07 |
米軍都市部撤退 イラクの治安なお不安 |
イラクに駐留する米軍が都市部から撤退した。市民には「占領」からの解放を喜ぶ声がある一方、直前には連続テロも起きた。イラク治安部隊の能力向上を急ぐとともに、国内の和解も進めたい。
米軍戦闘部隊の都市部からの撤退は昨年十一月、イラクと米国が結んだ地位協定に基づく措置。さらに今年二月、オバマ米大統領が駐留米軍のうち戦闘 部隊約十万人を来年八月末までに撤退、残りはイラク治安部隊の教育と米国による復興支援の護衛、そして二〇一一年末までに完全撤退-を発表した。一カ月の 死者が三千人を超えた〇六年夏に比べ、治安の格段の改善が進んでいると判断したからだ。
ところが撤退の迫った特に六月以降、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織などによるテロ活動が活発化し、首都バグダッド近郊のイスラム教シーア派 地区で七十八人が死亡するテロが起きた。クルド人とアラブ人が帰属を争う大産油地のキルクークでは、二件のテロで計百人が死亡している。
タラバニ大統領は「治安権限を引き継ぐわれわれの決意を揺るがすことはできない」と、テロを激しく非難するが、米軍撤退による国民の不安は高まるばかりだ。
アルカイダの活動が活発な北部モスルについては米軍は、残留を要望したが、イラク政府側は「予定通りの撤退」を貫いた。しかし国民がなお危険にさらされている現状では、郊外に再配置した米軍がテロなど緊急事態に対し速やかに対応できる態勢になっていることが不可欠だ。
イラクの治安部隊だけでは不安な材料としては、旧フセイン政権時代の強力な治安部隊を指揮していたスンニ派元幹部が、シーア派からの報復を恐れ、国外に脱出したままとの指摘がある。マリキ首相としては、こうした幹部を呼び戻したい意向だが、シーア派勢力が反対している。
両派が容易に和解できない歴史的背景は分かるが、その困難を越えなくてはイラクの真の再建はできない。さらに北部地域の住民イラク・クルド人との協調も必要だ。それらがそろってこそ未来のイラク像が描ける。そのためにはアラブ諸国を含めた国際的協調が強い支えとなる。
イラク開戦から六年が過ぎ、シーア派主導政権も定着しつつある。宗派、民族対立を克服し、一丸となって国民が平和で、安全な生活が送れる新生イラクの再建は国際的な願いでもある。
2009/07/02 11:28 |
イラン:ムサビ氏が声明…大統領選、無効訴え |
【テヘラン春日孝之】イラン大統領選で保守強硬派のアフマディネジャド大統領の再選が確定したことについて、改革派のムサビ元首相は1日、「(大 統領の2期目は)正統性がない」と主張する声明を発表した。街頭での抗議行動を封殺された改革派は「舌戦」に軸足を移し、徹底抗戦する構えのようだ。
ムサビ氏は自身のウェブサイト上で「まだ遅過ぎはしない」とあくまで再選挙を求める姿勢を強調。「国民の権利を放棄しないよう訴え続けることは我々の歴史的な責務だ」と述べた。さらに治安当局に逮捕された改革派支持者を「革命の子供たち」と呼び、全員の釈放を要求した。
また、ムサビ氏と共同歩調を取るカルビ元国会議長も同日、ウェブ上で、アフマディネジャド政権を「合法と認めない」と主張。「どんな環境下でもあらゆる手段で闘争を続ける」と決意を示した。
選挙戦でムサビ氏を支援したハタミ前大統領も「(選挙結果は)国民と民主主義に対するクーデターだ。(当局が)情勢を沈静化させたいのなら、大量逮捕を続けるべきではない」と訴えた。
選挙結果の最終承認機関である護憲評議会は先月29日、現職の再選を確定させたが、改革派陣営は、国民的人気の高いハタミ氏も加わって、選挙結果を追認した最高指導者ハメネイ師との対決も辞さない構えだ。
一方、ファルス通信によると、アフマディネジャド大統領はアフリカ連合首脳会議へのオブザーバー参加のため、1日から3日間の日程で予定していたリビア訪問を中止した。外務報道官は「多忙のため」と説明したが、国内情勢への懸念が背景にありそうだ。
2009/07/02 11:27 |
イラク、6月の民間人死者が激増 |
イラクで6月にテロや攻撃で死亡した民間人の数は、少なくとも373人に上ったことが1日、ロイター通信が伝えた保健省の統計で分かった。イラク戦争開戦後、最低の134人だった5月から激増し、イラクの治安が不安定であることをあらためて示した。
6月20日に北部キルクーク近郊で少なくとも82人が死亡した大規模テロなど、6月末が期限だった米軍戦闘部隊の都市部撤退が近づくにつれ、テロが頻発したことが犠牲者数を押し上げた。
2009/07/02 11:25 |
イラン大統領選:現職再選 拘束者「一部、処刑の可能性」--改革派弁護士 |
◇抗議再燃防ぐ狙いか
【テヘラン春日孝之】イラン大統領選後の混乱で拘束された2000人以上とみられる改革派支持者の処遇について、改革派系の弁護士は1日、毎日新 聞に「大半は2週間以内に釈放される見通しだが、一部は処刑される可能性がある」と語った。反体制的な抗議行動を組織した一部を「見せしめ」的に厳罰に処 すことで、抗議の再燃を抑え込みたい狙いがあるという。
弁護士によると、拘束されたのは改革派「イスラム革命ムジャヒディン機構」「イラン・イスラム参加党」、保守穏健派の「建設の奉仕者」の3党幹部を中心に、テヘランだけで500人以上、全国で2000人超という。
要人6人の弁護を担当するこの弁護士は、司法当局者から「一般のデモ参加者など犯意が軽微な者は2週間以内に釈放する方針だ」と告げられた。
だが、抗議行動は一部で最高指導者ハメネイ師打倒のスローガンも叫ばれており、デモを組織した活動家らにイスラム法の「モハレブ(神への戦い)」を適用、極刑が下る可能性が高いという。
一方、イスラエル紙エルサレム・ポスト(電子版)は1日、イランへの電話取材で、未確認情報として、イラン北東部マシャドで先月29日、既に6人が処刑されたと伝えた。